ソーシャルメディア・インフルエンサーは何ではないか
ライフスタイル・メディアの研究において、ソーシャルメディア・インフルエンサーが従来型のメディア人ではないと主張されるとき、彼らは何ではないと主張されているのか。その答えは少なくとも2つある。
- 専門家:合理的知識による権威
- 有名人:大衆的な人気による権威
インフルエンサーは専門家的な側面と有名人的な側面を兼ね備えつつも、両者からは区別される存在として理解される。
ただし、このような位置づけをされるのはインフルエンサーに限らない。むしろ、インフルエンサーは以下のタイプのメディア人の系譜に置かれる。
- 「日常の専門家」あるいは「文化仲介者」
- 評論家、ジャーナリスト
- ライフスタイル専門家
- ソーシャルメディア・インフルエンサー
彼らはジャーナリズム的に言えば、ハードニュースではなくソフトニュースを担ってきた存在である。掃除や料理、ファッションや旅行をはじめ、各種の家事や余暇に関する「専門家」としてふるまうが、その専門性の根拠は国家資格や学位ではなく、長年の経験や当事者性に置かれる。同時に、彼らは「有名人」として大衆的な人気を集めるが、その規模は国民的なものではなく、特定の界隈に限られる。またスター(例:大谷翔平)のように非凡さによって支持されるのではなく、一般人の延長としてのリアルさがあること(真正性)によって支持を集める。
近代日本の家政学者は学校教育にとどまらずラジオ出演などの社会教育を通して生活に影響を与えたが、その立場は「専門家」として見るべきものだろう。対して、料理研究家は「ライフスタイル専門家」であり、料理系YouTuberは「ソーシャルメディア・インフルエンサー」として捉えられる。
問題は、日常の専門家=文化仲介者の系譜のなかで、インフルエンサーの独特さがいかに理解できるかということで、実はこのことは必ずしも明確に論じられていない。評論家・ジャーナリストは雑誌研究、ライフスタイル専門家はテレビ研究、インフルエンサーはSNS研究という形で、対応する媒体に応じて分野としても微妙に棲み分けられている印象がある。
メディア学一般の問題関心からすれば、インフルエンサーが専門家・有名人から区別されるメディア人であることが主張できれば十分なのかもしれないが、ライフスタイル・メディア研究からすれば、むしろそのうえで日常の専門家=文化仲介者のなかでどのような差異化がなされるのかが気になる。Cheng & Avieson (2025) を読むと、当事者にとってもジャーナリストとインフルエンサーの差異化・卓越化は関心の的になっていることがわかる。