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質的データ分析ソフトは使い捨ての時代に

昨年度AI(コーディングエージェント)を用いた質的研究として試みたのが、質的データ分析ソフトを自作するということだった。MAXQDAのようなソフトウェアに高いライセンス料を払わなくとも、Claude Codeで十分実用的なソフトが作れる、というのがその趣旨である。ただそれは「代替」の発想にとどまっていたと思う。

そこから1年経って、今より発展的なことを考えている。「データごとに使い捨てのソフトを作る」というものである。質的研究は文脈を重視するという割に、これまでの分析ソフトは文脈に応じて変化することはなかった。いつも同じUIが表示されており、中身のテキストのみがデータによって異なる、という具合であった。しかし、生活史インタビューの書き起こしデータならば「年表」や「タイムライン」のようなインターフェースで、YouTube動画のコメントデータならば「コメント欄」をそのまま再現したようなインタフェース上で分析をした方が、より文脈に即してデータの意味を捉えやすいはずである。

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「ソフト」と言っているが、Claude Codeが作ってくれるのは単体のHTMLファイルというシンプルなものである(その中にCSSやJavaScriptも書いてある)。10分くらいですぐ作れる。「研究プロジェクトごと」どころか「分析フェーズごと」にその都度必要なソフトを作っては捨て、作っては捨て、ということできる。「質的データ分析ソフトをつくる」ことは「フィールドノートを描く」のと同じくらいの工程になった。

それは分析が簡単になったという意味ではない。むしろみんなエスノグラファーとしての自覚を持てと要請されているわけで、分析者に突き付けられるのはデータの文脈に対してより感応的になれるかという問いだ。グラウンデッドセオリーライクな通り一辺の分析手順を書けば許されるという話ではなくなる。